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HUNTER×HUNTER キメラアント編の結末と考察|メルエムとコムギ、ゴンの代償

HUNTER×HUNTER キメラアント編の結末と考察|メルエムとコムギ、ゴンの代償

原作の対象巻を読む

HUNTER×HUNTER 18巻

対象: 18〜30巻

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メルエムを倒したのは、ゴンの拳ではありません。ネテロが使った「貧者の薔薇」の毒でした。一方、ゴンはピトーに勝つため、自分のこれからを差し出してしまう。キメラアント編は、敵を倒したという結果だけでは、誰が何を得たのかを説明できない章です。

王として生まれたメルエムが最後に望むのは、コムギともう一度、軍儀を指すこと。その小さな望みへたどり着くまでに、人間も蟻も取り返しのつかないことをしている。二人の最期が胸に残るのは、優しさだけで終われる話ではないからだと思います。

以下、メルエムとコムギの死、ゴンとピトーの決着まで含むネタバレがあります。

キメラアント編は何巻から何巻まで?

原作では単行本18〜30巻、第186〜318話にあたります。18巻はグリードアイランド編の決着と重なる巻です。19巻から買い始めると、カイトとの合流や調査の始まりを飛ばしてしまうので、章の入口から読むなら18巻からが分かりやすいです。

  • 最初から読むなら18巻。グリードアイランドを出たあとの流れも押さえられます。
  • メルエムとコムギの結末を読み返すなら30巻。王の記憶と「薔薇」の正体が決着につながります。
  • ゴンの回復まで追うなら、30巻から始まる会長選挙・アルカ編へ。その先は会長選挙編の巻数と読む順番で整理しています。

紙の単行本と電子書籍は、購入時に巻数とモノクロ・カラーの別を確認してください。集英社の18巻紹介と30巻紹介でも内容を確認できます。

カイトを取り戻す旅が、ゴンの逃げ道をなくしていく

始まりは、ゴンとキルアがカイトの仕事を手伝う調査でした。ところが、人間を捕食するキメラアントが念を覚え、護衛軍まで生まれたことで、二人の手に負える状況ではなくなります。ピトーに襲われたカイトを残して逃げる場面で、それまでの冒険の手応えが途切れます。

ゴンには、カイトがまだ生きていて、取り戻せるという希望が残ります。ナックルとの修行も討伐隊への参加も、その希望と結びついている。努力して強くなれば届く目標のように見えるところが、つらいです。

宮殿で再会したピトーは、負傷したコムギを治療していました。ゴンが憎んできた相手が、別の誰かを助けるために頭を下げる。ここでピトーが善人になったわけではなく、王にとって大切なコムギを守ろうとしているのですが、ゴンから見れば納得できる姿ではありません。

誰かを治せるなら、カイトも治せるはずだ。そう信じて待った先で、カイトはすでに死んでいて元には戻せないと告げられます。この場面は、強敵を前に怒りが頂点へ達するだけの展開ではありません。ここまで進む理由だった希望そのものが、なくなってしまう場面です。

ゴンの変貌は、成長を喜べない強さ

ピトーと戦うゴンの肉体は、極端に成長した姿へ変わります。通称「ゴンさん」と呼ばれる姿ですが、修行の成果としてその力へ到達したわけではありません。すべてを代償にする覚悟で、ピトーを倒す力を引き出しています。

その力でピトーを圧倒しても、この勝利によってカイトが元の姿に戻るわけではありません。勝つことと、ゴンが本当に望んでいたことが、完全に離れてしまう。だから、敵に一撃を入れるたびに気持ちが晴れる戦いにはならないのです。

ゴンの一途さは、これまで仲間を動かす力でもありました。グリードアイランド編では、危険を引き受けてでも自分のやり方を通そうとしながら、キルアやビスケと一緒に前へ進んでいます。ここでは、その一途さが自分の未来も周囲の声も遠ざけてしまいます。

ピトーを倒したゴンは瀕死となり、物語は回復の手段を探すキルアへ引き継がれます。「勝ったから大丈夫」とは言えない主人公を残すところに、この決着の重さがあります。

メルエムは、コムギに勝てないまま変わっていく

生まれた直後のメルエムは、自分に従わない者の命を簡単に奪います。その王が、軍儀ではコムギに勝てない。腕力でも頭のよさでもすぐには越えられない相手が、目の前に座り続けます。

コムギが王を説得して改心させるのではありません。彼女は軍儀に向き合い、メルエムも次の一局を求める。その繰り返しのなかで、命令すれば動く臣下とも、食べれば終わる獲物とも違う関係が育っていきます。

ここでは、メルエムの敗北が関係を終わらせません。負けたからこそ、また相手を知りたくなる。彼がそれまで人間に与えてこなかった時間を、コムギとの対局には使うようになる。この違いが、王の変化を言葉以上にはっきり示しています。

宮殿への襲撃でコムギが傷つくと、メルエムは彼女の救命をピトーに託します。支配する者の都合だけでは収まらない、失いたくない相手ができた。そのことが、ゴンとピトーの対面にも影響する構成です。

ただ、コムギを大切にするようになったからといって、王が奪った命や、国民を巻き込む選別計画が消えるわけではありません。メルエムの最期に心が動くことと、討伐が必要だったことは両立します。どちらか一方に片づけないから、読み終えたあとも考えが残ります。

ネテロと「貧者の薔薇」――決闘と討伐の結末は違う

ネテロの「百式観音」は、長い修練を積んだ人間の到達点を見せるような能力です。それでもメルエムには届きません。王は攻防のなかからネテロの偏りを読み取り、最後の攻撃にも耐えます。

この決闘の勝者はメルエムです。しかし、人類側が引き受けた討伐任務は、ネテロ個人の敗北では終わりません。ネテロは体内に仕込んだ小型爆弾「貧者の薔薇(ミニチュアローズ)」を起爆します。

爆発で瀕死になった王は、プフとユピーが体の一部を与えたことで復活します。さらに力を増したように見えても、すでに「薔薇」の毒に侵されており、その死を避けることはできません。王を助けた護衛軍にも、毒の被害が及びます。

ここで恐ろしいのは、念の強さを競う話の外側から結末が来ることです。ネテロの修行や王の才覚を、爆弾の仕組みは考慮しない。武人としての戦いに心を奪われたあとで、人間社会が作った殺傷の手段を見せられます。

個人の強さではかなわなくても、社会として相手を滅ぼすことはできる。その勝利を、いつもの「人間の底力」と同じ調子では喜べない。キメラアント編の後味を決める場面の一つです。

メルエムとコムギの最期に、王の命令は要らない

復活後のメルエムは、コムギについての記憶を失っています。それを呼び戻すのが、追い詰められたウェルフィンの口から出たコムギの名前です。王の力を恐れる者の一言が、王を戦いから引き離すきっかけになるのが面白いところです。

死期を悟ったメルエムは、パームにコムギの居場所を教えてほしいと頼みます。相手を屈服させれば済んだ王が、頭を下げる。残された時間に何をしたいのかが、その姿で伝わってきます。

再会したメルエムは、自分と一緒にいればコムギの命にも危険が及ぶことを伝えます。コムギはそれを知ったうえで、彼のそばに残ります。二人は最期まで軍儀を指し、メルエムはコムギに抱かれて命を終える。コムギもまた、王から伝わった毒によって死を迎えます。

それまでの軍儀には、王を退屈させないため、命をつなぐためという切迫した事情がありました。最後の対局には、もう次の仕事も支配もありません。ただ、この相手と指したいという望みが残っています。

一緒にいることを王が強制するのではなく、コムギ自身が選ぶ。その選択を受け取る側にメルエムがいる。人間の命を一方的に扱ってきた人物の終わりとして、この関係の変化は大きいです。静かな場面なのに、それまで描かれた王の姿が次々と思い返されます。

キルアに残された、ゴンを助けるという仕事

キルアはこの章で、イルミに刺されていた針を抜き、自分の行動を縛っていた恐怖と向き合います。それでも、自由に判断できるようになったことが、そのままゴンを救える強さにはなりません。

敵と戦う力がついても、大切な相手が自分を傷つける決断まで止められるとは限らない。ゴンのそばにいるキルアを追うと、この章が友情の強さだけでは解けない問題を描いていると感じます。

メルエムとコムギの物語には、30巻で終わりが訪れます。けれど、ゴンが払った代償は残ったままです。その先の会長選挙・アルカ編では、キルアがゴンを助けるために動きます。戦闘の決着だけで本を閉じると残る苦しさに、次の章が別の方向から向き合っていきます。

キメラアント編を読み返すなら、誰が勝つかを知ったうえで、登場人物の「いま守りたい相手」が変わる場面を追ってみてほしいです。ゴン、ピトー、メルエム、キルア。同じ戦場にいても、見ている相手は一致していません。そのずれが、戦いの結果以上に、この章を忘れにくいものにしています。

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