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HUNTER×HUNTERゾルディック家編の感想|キルアを迎えに行く、という難しさ

友達の家を訪ねるだけで、どうしてここまで苦労するのか。ゾルディック家編では、その疑問がそのままキルアの育った環境の説明になっています。
門を開けるにも訓練が要り、敷地へ入れたと思えば使用人に止められる。肝心のキルアとは、会って話すことさえ簡単にはできません。ハンター試験であれだけ自由に動いていた少年の「実家」が、ここまで遠い。その落差から始まる話です。
扱うのは単行本5巻に収録されたゾルディック家編。以下、キルアがゴンたちと再会し、家を出る結末まで触れます。
試験の終わりを、キルアの答えにしていいのか
ハンター試験の最終試験でイルミと対面したキルアは、レオリオと対戦していたボドロを殺して失格になります。自分の対戦相手を倒しすぎた、という事故ではありません。兄とのやり取りのあと、キルアが本来いたはずの競争から降りてしまう。その不自然な退場が、ゴンには納得できない。
ここでゴンが気にしているのは、キルアがハンターになれなかったこと以上に、キルア自身の気持ちです。イルミの説明を聞いて済ませず、本人に会いに行く。相手が暗殺一家でも、その手順を変えません。
ゴンの強引さは、時に周囲を困らせます。ただ、この場面ではそれが必要だったとも思えます。兄が弟の本心を代弁し、試験の結果も出ている。そこで話を終えられてしまえば、キルアが言い直す機会はなくなってしまうからです。
クラピカとレオリオも同行します。試験中にそれぞれ違う理由で協力していた4人が、試験の外でも関係を続けようとしている。資格を取ったあとの最初の行動が、合格祝いではなく友人を迎えに行くことなのが、この4人らしいところです。
試しの門から先は、キルアの家のルール
ゾルディック家の敷地に入るための「試しの門」は、最も小さい扉でも左右合わせて4トンあります。片側が2トンなので、門全体を2トンと捉えると重さが違ってしまいます。
門番のゼブロがいるから、取り次いでもらえば済む。普通の訪問ならそれで終わるはずです。ところがこの家では、訪ねてきた側にも身体能力が要求される。正規の入口を通らなければ、番犬ミケに侵入者として扱われる危険まであります。
ゴンたちはゼブロのもとで訓練し、門を開ける力をつけます。この寄り道には少しおかしさもありますが、同時に嫌な説得力がある。キルアが試験で何気なく見せていた強さは、こういう場所で生活するうちに身についたものなのだと分かるからです。
ゼブロは事情を話し、ゴンたちに力を貸してくれます。それでも、彼の親切だけで家の決まりを飛び越えることはできません。屋敷に近づくほど、個人の好意と家の命令が食い違い始めます。
カナリアは、通したくないから止めているのか
執事見習いのカナリアは、近づくゴンを何度も打ち据えます。ゴンには彼女を突破する必要がありますが、その態度を単純な敵意とは受け取りません。
カナリアには、キルアから友達になろうと誘われた過去があります。それを使用人という立場から断っている。キルアへの親しみがあっても、対等な関係を選べなかった人です。そんな彼女の前に、遠くからキルアの友達が来る。
通してあげたい気持ちと、命令に従う責任の両方があるから、彼女は苦しくなる。ゴンが立ち上がるたびに、ただ相手を殴って追い返すだけでは解決しないことが露わになっていきます。
この場面のよさは、カナリアが弱かったから道が開くわけではないところです。力の差は大きいまま、それでも彼女がキルアを案じる気持ちは消えない。家の規則で押さえ込まれていたものが、ゴンの訪問によって表に出てきます。
一方で、殴られ続けるゴンのやり方を無条件に褒める気にもなれません。相手が折れるまで、自分の体を差し出して進む。その頑固さには、人を動かす力と危うさが同居しています。友情の温かい話の中にも、ゴンの手放しでは喜べない性質が見える場面です。
シルバの許可で、すべてが解決したわけではない
屋敷の中では、キルアが父シルバと話します。ゴンが父親を倒して連れ去る展開にはならず、キルア自身が友人と会いたいと伝え、父が外へ出ることを認める。最後は本人の言葉に戻ってきます。
ここを「キルアが初めて自分で決めた瞬間」とすると、それまでの行動を小さく見積もってしまいます。キルアはすでに家を飛び出し、ハンター試験を受けていました。自分で外へ向かったことがあるからこそ、兄に揺さぶられて帰宅したあと、もう一度出ていく選択に重さがあります。
シルバは友達を裏切らないよう約束させ、息子を送り出します。キルアの話を聞く態度には、父親としての穏やかさも見える。家族全員が同じ口調で命令してくるわけではないのが、かえって判断を難しくしています。
というのも、シルバはそのあとキキョウに対して、キルアはいずれ戻ってくるという見通しを示すからです。これはキルア本人に別れ際の脅しとして告げる言葉ではありません。送り出した父の側に、まだ息子の将来への確信が残っていると分かる場面です。
キルアには外へ出る道が開けた。でも父親は、家とのつながりまで失うとは考えていない。親子で同じ出来事を見ていながら、その先に思い描いているものが違う。この食い違いが、再会の喜びのあとにも引っかかります。
ゴトーのコイン遊びに残る、送り出す側の気持ち
再会前の待ち時間には、執事ゴトーとのコインを使ったやり取りがあります。小さな遊びの形を取りながら、相手の手元をどう見抜くか、見せられたものをどこまで信じるかが問われる。屋敷に入っても緊張がほどけません。
ゴトーにも、キルアを大切に思う気持ちがあります。けれど、ゴンを最初から歓迎するだけの人ではない。キルアがこれから一緒に行く相手を、自分の目で確かめようとする態度に、世話をしてきた人の感情がにじみます。
ゼブロ、カナリア、ゴトー。屋敷で出会う人たちは全員、ゾルディック家の側に属しています。それでも、キルアに向ける気持ちは家族の期待や命令だけでは括れない。短い章の中で、キルアの暮らしていた場所に複数の顔が見えてきます。
キルアがゴンと再び並んで歩けるようになったとき、達成したこと自体は「友達に会えた」という小さなものです。そこに至るまでの距離を読んでいるから、その普通さがうれしい。5巻を読み返すなら、門の大きさだけでなく、キルアを通す人、止める人、それぞれの態度を追ってみると、この再出発がいっそう味わい深くなります。
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