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SLAM DUNK海南戦のネタバレ考察|桜木のパスミスだけでは語れない敗戦

海南戦の最後、桜木花道は拾ったボールを赤木剛憲へ返そうとして、相手の高砂一馬へ投げてしまいます。湘北は88対90で敗れ、桜木は涙を流す。あまりに苦い終わり方なので、このミスが試合全体の印象になりやすい一戦です。
ただ、そこまで読み返すと、桜木がいなければ2点差に迫ることもできなかったとわかります。赤木が抜けた時間を守り、神宗一郎のシュートに食らいつき、終盤には牧紳一を相手にダンクを決める。できることが増えた試合の最後に、取り返せない失敗が待っています。
ここでは原作の海南大附属戦を、決着までネタバレありで振り返ります。試合を読む範囲は新装再編版8〜9巻です。集英社の8巻紹介では決勝リーグ初戦、9巻紹介では同点で折り返したあとの攻防が確認できます。
宮益を相手に、桜木の弱点が見えてしまう
決勝リーグは湘北、海南、陵南、武里による総当たりです。全国へ進めるのは上位2校。初戦の海南は、前年度まで16年続けてインターハイに出場しているチームです。この年の結果によって17年連続になります。
海南の強さは牧の突破力に目が行きますが、桜木に宮益義範をつける高頭力監督の判断も見逃せません。宮益は160cmの控え選手で、桜木よりはるかに小さい。桜木は、その姿を見て相手を軽く見てしまいます。
ところが、このときの桜木には、止まった状態から確実に決められるシュートがほとんどありません。背が低い相手なら楽に点を取れるはずだという思い込みに、技術が追いつかない。宮益は桜木と空中で競り合う必要すらなく、経験の浅さを露わにします。
さらに宮益自身がシュートを決める。身体能力に恵まれなくても、海南の練習を続けてきた3年生です。桜木が見た目から想像した相手と、実際の実力がまるで違います。ここで桜木は一度ベンチへ下がることになります。
桜木のリバウンドや跳躍力が役立つことは変わりません。ただ、まだ任せられないプレーもある。海南はその偏りを短い時間で見抜き、試合の中で突いてくるのです。
赤木がいない時間を、流川と桜木でしのぐ
前半、赤木が足首を負傷してコートを離れます。処置を受けるために下がり、その穴を埋める桜木が再び出場します。(通常版13巻の紹介)
湘北にとって赤木は、点を取る選手であると同時に、ゴール下を守る中心です。その赤木がいなくなると、いつもの攻撃を続けるだけでは追いつけません。流川は自分で得点を重ね、桜木はゴール下の仕事を引き受けます。
流川の攻撃で、湘北は前半を同点で終えます。強豪相手に得点できることは、この試合では十分に示される。一方で、その攻撃を最後まで続ける体力が残るかどうかは、別の問題です。
後半になると前半の消耗が響き、流川は終盤に交代します。得点場面だけを追えば一段強くなった試合に見えても、試合全体では最後まで力を出せなかった悔しさが残る。流川にも、自分の出来を手放しで喜べる試合ではありません。
赤木は足を固定して戻ってきます。長く望んだ全国への機会を逃したくない気持ちは伝わりますが、元どおりには動けません。湘北は赤木の足と流川の体力に不安を抱えながら、海南を追わなければなりません。
牧に人数をかけると、外には神がいる
海南の攻撃では、牧がゴールへ向かって切り込みます。一人では止めにくく、助けに寄れば、外で待つ神へパスが出る。守備側が牧を警戒するほど、神に打つ余地が生まれます。
湘北は牧に4人を集め、神には桜木をつける作戦に出ます。桜木の仕事は、神に簡単にはボールを持たせず、持たれてもシュートを打たせないこと。全員の動きを読んで複雑に守るより、目の前の神を追い続ける役割です。
一度かわされても追いついてシュートを止める桜木の動きには、足の速さと跳躍力が生きています。前半は宮益相手に何をしてよいかわからなくなった選手が、後半には守備の大事な部分を任される。不得意なことを見破られても、得意なことまで消えるわけではありません。
それでも海南には宮益がいます。牧と神を抑えるために守備を集中させれば、別の選手が打てるようになる。湘北が対策を出すたびに、海南も選手の使い方を変える。牧一人を倒せば勝てる試合にはなりません。
ダンクのあとにも、まだ勝負は続いている
終盤、三井寿のシュートが外れ、高砂が桜木を抑えてリバウンドを取ります。ここで湘北の攻撃は終わったように見えますが、宮城がボールを奪い返す。桜木はその機会を使い、フェイントで高砂をかわしてゴールへ向かいます。
待つのは牧です。桜木はぶつかりながらダンクを決め、追加のフリースローも得ます。スコアは88対90。桜木のミスだけで敗戦を振り返ると、この直前に自分の力で勝つ可能性をつなげたことが抜け落ちてしまいます。
湘北はフリースローをわざと外し、リバウンドから三井の3ポイントにつなぐ逆転を狙います。赤木がボールを確保し、三井はシュートへ。しかし清田信長がわずかにボールへ触れ、シュートは外れます。
そこで再びリバウンドを取ったのが桜木です。次の一本で同点に追いつく余地は残っている。けれども、赤木へ渡そうとしたパスが高砂に渡り、試合は終わります。
一本のダンクで決着するのではなく、フリースロー、リバウンド、シュート、もう一度のリバウンドと続く。その間、海南の選手たちも最後まで手を伸ばしています。湘北の攻撃を止めた清田と、最後にボールを受け取った高砂まで含めて、海南が守りきった終盤です。
桜木が泣いても、予選は終わらない
桜木は自分のパスミスを受け止めきれず、涙を流します。普段のように大声でごまかすことも、相手に腹を立てることもできない。自分が勝敗に関わる選手になったからこそ、失敗も自分のものとして返ってきます。
赤木はそんな桜木に声をかけ、まだ決勝リーグが続くことを伝えます。赤木自身も、負傷した足で粘った試合を落としている。それでも、ここで桜木を責めて終わることはできません。湘北にはあと2試合あり、桜木の力も必要です。
敗戦後には、流川も体力が最後まで持たなかった自分に責任があると考え、桜木と衝突します。この言い合いからは、桜木一人だけが試合を背負っていたわけではないことがわかります。(流川の消耗と敗戦後のやり取り)
桜木の最後のパスは、確かにミスでした。その事実を薄めなくても、桜木が拾ったボールや止めたシュートの価値は残ります。勝てなかった悔しさと、チームに必要な選手になりつつある手応えが、同じ試合の中にある。海南戦を読み返すなら、最後のパスへ至るまでに、桜木へ任される仕事がどう変わったかを追ってみてください。
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