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ONE PIECEマリンフォード編の感想|エースを失ったルフィが、立ち止まるまで

エースを救うために走り続けたルフィは、処刑台までたどり着きます。手錠が外れ、兄弟が並んで戦うところまで行く。それだけに、直後にエースを失う展開は、助けが間に合わなかったという言葉では受け止めきれません。
マリンフォード編では、ルフィの行動力も、人を味方にする力も消えていません。それでも救えない。力を出し尽くした先に敗北があるから、戦争の後に立ち止まる時間までが必要になります。以下、エースと白ひげの死、戦後のルフィの選択までネタバレを含みます。
インペルダウンから戦後まで読むなら54〜61巻
この記事では、ジャンプ・コミックス通常版54〜61巻の第525〜597話を扱います。公式のストーリー一覧では、二つの編に分かれている範囲です。
| 範囲 | 通常版の巻数・話数 |
|---|---|
| 大監獄インペルダウン編 | 54〜56巻・第525〜549話 |
| マリンフォード頂上戦争編 | 56〜61巻・第550〜597話 |
56巻の途中から戦争へ移り、59巻でエースと白ひげの最期が描かれます。60巻の幼少期の回想と戦後の対話を経て、61巻の第597話でルフィの修業が始まる。61巻には、その先の2年後の再集結も収録されています。
監獄を出られたのは、ルフィが全員に勝ったからではない
ルフィはハンコックの助力でインペルダウンに潜入しますが、マゼランの毒に倒れます。兄を助けに来た側が、自分では動くこともできなくなる。ここからは、ボン・クレーがルフィを見捨てず運び、イワンコフの治療へつないでいかなければ先へ進めません。
回復したルフィが最下層に着いても、エースはすでに移送された後です。ここまでの苦闘の先に、会いたかった相手はいない。目的地を変え、来た道を今度は脱獄のために戻る展開が、残り時間を削っていきます。
同行者には、ジンベエやイワンコフだけでなく、かつての敵もいます。バギーやMr.3は脱出したいし、クロコダイルには戦場で果たしたい別の狙いがある。全員がルフィの気持ちに共感して集まったわけではありません。それぞれの事情が重なり、一時的に一緒に動ける集団になっているのが面白いところです。
その中で、ボン・クレーの行動は際立ちます。脱出の最後には監獄に残って正義の門を開け、ルフィたちを先へ行かせる。再会した友人を助けるために、今度は自分が脱出する機会を手放すのです。(公式あらすじ)
ルフィはマゼランを倒して監獄を制圧したわけではありません。治療され、逃げ道を作ってもらい、誰かを残して海へ出る。戦場へ着く前から、この救出はすでに多くの人に支えられています。
手錠が外れる瞬間まで、希望は積み上がっている
マリンフォードでは、白ひげ海賊団と海軍本部、王下七武海が戦っています。そこへ飛び込んだルフィには、大将や七武海と渡り合いながら戦場全体を動かす力はありません。狙いをエースの救出に絞り、周囲の援護で前へ進みます。
処刑を止めようとして覇王色の覇気を放つ場面でも、本人は無意識です。相手を選んで自在に使える技を、この戦場で身につけたわけではない。それでも、その一瞬が処刑を妨げ、白ひげたちがルフィをさらに援護するきっかけになります。
最後にはMr.3の蝋で作った鍵も役立ち、エースの手錠が外れます。かつてリトルガーデンで一味を苦しめた能力が、今度は兄を自由にする。インペルダウンでできた奇妙な協力関係が、ここで実を結ぶのです。
そしてエースは炎をまとい、ルフィと並んで戦う。読者が待っていた救出の絵は、確かに一度描かれます。仲間の努力が無駄だったから悲劇になったのではない。助け出せたことと、無事に帰れることの間に、まだ距離が残っていました。
エースが足を止める理由と、最後に伝えたこと
撤退する途中、エースは白ひげを侮辱する赤犬の挑発に反応し、引き返します。白ひげは、生まれに負い目を抱えていたエースを息子として迎えた人です。その人を否定されることが、エースには受け流せない。
ここは、エースの誇りを理解できることと、その判断を肯定できることが別になる場面です。皆が作った逃走の機会を、怒りによって危険にさらしてしまう。白ひげへの思いが強いとわかるほど、止まらずに行ってほしかったという気持ちも残ります。
赤犬の攻撃がルフィに向いたとき、エースは身を投げ出して弟を守り、致命傷を負います。最後に伝えるのは、自分を愛してくれた人たちへの感謝でした。海賊王ロジャーの息子であることを理由に、自分の存在まで憎まれてきた彼が、周囲の思いを受け取る言葉です。
だからといって、救われた気持ちで死ねたからよかった、と片づけられる最期ではありません。生きていてほしかった人が大勢いて、ルフィもその場で動けなくなってしまう。エースが自分の人生に見つけた答えと、残される側の喪失は、同時に描かれています。
白ひげは、自分を刺したスクアードも家族として扱う
戦争中、海軍の偽情報を信じたスクアードが白ひげを刺します。白ひげが傘下の海賊たちを売ったと思い込んでの行動です。それでも白ひげは、彼を抱きしめる。(58巻)
自分に従ってくれる間だけ大切にするのなら、スクアードはここで切り捨てられるはずです。そうしない白ひげの姿を見ているから、エースが彼を父として慕う気持ちにも説得力が出る。ただし、その大きさが戦争を有利に進める保証になるわけではありません。傷は残り、体力は失われていきます。
白ひげは仲間たちの撤退を支え、最後は黒ひげ海賊団の攻撃を受けて命を落とします。ひとつなぎの大秘宝の実在を告げるのは死の間際で、黒ひげがグラグラの実の能力を奪うのは、その死後です。
白ひげが残そうとしたのは生きて帰る仲間たちでした。一方の黒ひげは、その死さえ自分の力を増す機会に変える。同じ戦場の終わりに、海賊として何を手に入れたいのかという違いがむき出しになります。
戦争を終わらせる言葉は、海軍の側からも上がる
エースと白ひげが死んでも、戦闘は止まりません。ルフィを抱えて逃げるジンベエにも赤犬が迫り、さらに負傷者が増えていく。大きな勝敗が決まった後に、まだ人が倒れる時間が続きます。
そこでコビーが、これ以上の犠牲を止めようと声を上げます。海兵として戦場にいた彼が、救える命を救うことを優先してほしいと訴える。同じ海軍の中でも、戦い続けるべきかという判断は一つではありません。
赤犬がコビーへ向けた一撃をシャンクスが止め、その後、センゴクが終戦を受け入れます。シャンクスの登場だけに目を奪われますが、その前にコビーが声を上げた数秒がある。力の大きい人物だけが、この戦争の終わりを作ったわけではないのです。
ジンベエは、エースを忘れろとは言わない
ルフィはジンベエに守られ、ローの潜水艦で戦場を脱出して治療を受けます。それでも目を覚ました後、兄を失った事実からは逃れられません。エースとサボとの幼い日々が描かれることで、死んだのが頼れる戦士である以前に、ルフィの暮らしの中にずっといた兄だったとわかります。
自分の弱さを責め続けるルフィに、ジンベエは今も残っているものへ目を向けさせます。ルフィは仲間たちを思い出し、会いたいと口にする。この対話があるのは60巻です。
仲間がいるから悲しくなくなる、という慰めではありません。エースを失ったままでも、会いたい相手はいる。その気持ちが戻ることで、ルフィはようやく次の行動を考えられるようになります。
けれど、すぐには再集結しません。レイリーの提案を受け、2年間力をつけてから会おうと仲間に伝える。兄を救うために一秒でも早く進もうとしたルフィが、今度は仲間と旅を続けるために時間をかけるのです。
マリンフォード編を読み終える場所として、第597話まで見届けたいのはそのためです。強くなりたいという願いが、すぐに敵へ向かう行動から、待って鍛える選択へ変わる。喪失を取り消せないまま、次の航海を守るためにできることを始める姿が、戦争の長い余韻として残ります。
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