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ONE PIECE東の海編の感想|違う夢を持つ5人が、同じ船に乗るまで

ルフィは会って間もない相手を、ずいぶん簡単に仲間へ誘います。けれど、誘われた側が海へ出るまでには時間がかかる。ゾロにはくいなとの約束があり、サンジにはゼフへの恩があり、ナミには置いていけない村があります。
東の海編で面白いのは、仲間が増えるたびに、その人が譲れないものも見えてくることです。ここではアーロンとの決着とローグタウン出航まで、結末を含めて振り返ります。
原作の範囲は、ジャンプ・コミックス通常版の1〜12巻・第1〜100話です。公式のストーリー区分に従うと、12巻の冒頭で東の海編が終わり、第101話から偉大なる航路へ進みます。
シャンクスが預けた帽子は、ナミの頭にも載せられる
第1話でシャンクスがルフィに渡す麦わら帽子は、立派な海賊になって返すという約束の品です。ルフィにとっては、まだ実現していない未来を預かったようなものでもある。だから、帽子を粗末に扱われると本気で怒ります。
その帽子を、アーロンとの約束を破られて泣くナミにかぶせる。事情をすべて説明してもらうより先に、自分の大切なものを預ける行動があるのです。ルフィがどれだけ帽子を大切にしているかを読んできた分、黙って預ける動作にも重みがあります。
ルフィは海図を描けず、料理もできません。海へ出た時点では、一人で航海を続ける準備さえ十分ではない。それでも、自分にはないものを持つ相手を見つけるのは早い。東の海編の勧誘は、船長が部下を集める手続きというより、自分一人ではできない旅の形を探しているように読めます。
ミホークに負けても、ゾロの夢は小さくならない
シェルズタウンで出会ったゾロは、海軍に捕らえられた状態でも、自分が曲げたくない筋を通そうとします。ルフィが気に入るのは、評判の高い賞金稼ぎであることだけではありません。追い込まれても、目の前の相手に迎合しないところです。
そのゾロが、バラティエではミホークにまるで歯が立たない。東の海で恐れられていた剣士が、小さな刃物で攻撃を受け止められてしまう場面は、世界一という目標の遠さを容赦なく見せます。
ただ、敗北を経たゾロは、目標を現実的な大きさに縮めようとはしません。生き延びて強くなるとルフィに誓う。ルフィも、負けた仲間を見限ったり、目指すものを変えさせたりしない。(6巻)
まだ数人しかいない一味の中に、船長の夢と同じくらい大きな夢が並んでいる。ゾロが自分の目標を持ったままルフィについていけることが、この船の居心地を早くも伝えています。
ウソップは、村人に信じてもらえなくても戦う
シロップ村でクロの計画を知ったウソップは、村に危険を知らせようとします。しかし、普段から海賊が来ると騒いでいたせいで、本当のことを言っても信じてもらえません。ここでは嘘つきであることが、きちんと本人に返ってきます。
それでもウソップは、村を見捨てる方へは進まない。誰にも知られず襲撃を食い止めれば、村人にとってはいつもどおりの朝が来る。結果として、自分の警告までいつもの嘘にしてしまおうとするのです。
周囲から認められてから勇気が出るのではなく、認められないままでも守りたい相手がいる。弱くて怖がりなウソップの踏ん張りには、そういう順序があります。ルフィたちが一緒に戦うことで、彼が一人では果たせなかった決意にも手が届く。
クロを倒した後、ウソップは村を出ます。カヤから贈られるゴーイングメリー号とともに、これまで口にしてきた海賊の冒険へ踏み出す。大きなことを言う癖は残っていても、今度は本当に海の上にいる。その少し可笑しく、頼もしい変化がいいところです。
サンジがゼフの店を離れるまで
サンジは、空腹で倒れかけたギンに食事を出します。ところが、そのギンを通じてクリークが現れ、バラティエは乗っ取りの危機に陥る。親切をしたらすぐに報われる、という運びにはなりません。
サンジ自身、ゼフとともに遭難し、飢えを経験しています。相手の素性がどうであれ、食べられない苦しみを前にすると料理を出す。その判断は危うさを含んでいますが、だからこそ後のギンの迷いにも重みが出ます。サンジを追い詰めたギンは、食事をくれた恩人にとどめを刺せず、クリークに店を見逃すよう求めるのです。
一方で、ゼフに命を救われた恩は、サンジが店を出られない理由にもなっています。オールブルーを探したい気持ちがあっても、自分だけ自由になることはできないと考えている。
ゼフとコックたちは、そんなサンジを送り出そうとします。普段は口の悪いやり取りを続けているのに、別れ際のゼフの気遣いでサンジの感情があふれる。旅立ちによって恩を忘れるわけではないことが、深く頭を下げる姿から伝わります。誰かに大切にされた経験が、ここではようやく海へ向かう力になります。
ナミを縛っていたのは、守られない約束だった
ナミがアーロンのもとで働いていたのは、故郷を買い戻すためです。育ての母ベルメールは、アーロンに村を占拠されたとき、すでに殺されています。仇の一味にいることで残された村人を守る、という暮らしをナミは8年間続けてきました。
1億ベリーを集めれば村を解放する。その約束があるから、ナミは海賊から金を盗み、嫌われても耐えられた。ところが目標に近づくと、アーロンと結託した海軍に金を奪われます。(9巻)
ナミの絶望は、貯金を失ったことだけではありません。頑張ればいつか終わると思っていた年月に、相手は初めから終わりを用意していなかったのです。
ナミがルフィに助けを求める場面を、素直になれた瞬間とだけ読むのは少し軽い気がします。仲間に頼れば村を危険にさらすかもしれず、自分が耐えている限りは守れると思っていた。その方法が壊され、村人たちも命をかけて抵抗しようとするところで、ようやく一人では止められないと口にする。ここまでの苦しさが、短い訴えに詰まっています。
アーロンはナミの航海術を高く評価しています。それでも、彼女がどう生きたいかには関心がない。役に立つから手元に置くという態度と、ナミ自身を仲間として迎えたいルフィの態度は、戦いの中ではっきり分かれていきます。
ルフィが測量室を壊し、最後にはアーロンパークごと敵を打ち倒すとき、失われるのはナミを閉じ込めてきた場所です。同じ海図を描く才能でも、これからは自分の旅に使える。ナミの加入でうれしいのは、一味に航海士がそろうこと以上に、彼女がようやく行き先を選べることなのだと思います。
ローグタウンを出る5人には、それぞれの行き先がある
アーロンを倒せば、東の海では怖いものがなくなったようにも見えます。しかしローグタウンで待つスモーカーには、ルフィの攻撃が通じません。バギーに捕らえられた処刑台では落雷に救われ、スモーカーにはドラゴンが介入する。最後まで、自分たちの強さだけで切り抜けてはいないのです。
それでも船は進みます。出航した5人が樽に足をかけ、一人ずつ夢を口にする場面では、誰も同じ目的を言っていません。海賊王、世界一の剣豪、世界地図、勇敢な海の戦士、オールブルー。それぞれの望みを抱えたまま、同じ海へ出ていく。
東の海編でそろうのは、全員が船長と同じ夢を持つ一団ではありません。互いの夢を笑わず、そのために必要な仕事を引き受ける仲間です。第1話で一人だったルフィの船出は、この場面でようやく5人の船出になります。
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