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ONE PIECE

ONE PIECEアラバスタ編の考察|ビビの声は、なぜ戦場に届かなかったのか

ONE PIECEアラバスタ編の考察|ビビの声は、なぜ戦場に届かなかったのか

原作の対象巻を読む

ONE PIECE 12巻

対象: 12〜24巻

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ビビは、国王軍にも反乱軍にも死んでほしくない。国を壊そうとしているのがクロコダイルだと知っているからこそ、国民同士が戦うのを止めようと走り続けます。けれど、正しい事情を知っていることと、それを相手に聞いてもらえることは違う。アラバスタ編では、その距離がひどく遠く感じられます。

ルフィがクロコダイルを倒すまでの物語でありながら、最後まで気になるのはビビの声が届くかどうか。ここではドラム島への寄り道も含め、内乱の終結、ビビとの別れ、ロビン加入までのネタバレに触れます。

アラバスタ編はどこまで? ロビン加入を含めて24巻

ONE PIECE公式の区分では、アラバスタ編はジャンプ・コミックス通常版12〜24巻・第101〜217話です。偉大なる航路への突入、ウイスキーピーク、リトルガーデン、ドラム島もこの範囲に含まれます。

砂の王国での戦いを読み返したい場合は、アラバスタに到着する17巻から。ビビとの旅がどう始まったかを追うなら12巻から読むとつながります。ビビとの別れは23巻ですが、ロビンが船に現れる第217話は24巻に収録されています。

ビビを故郷へ送る旅は、ナミのために進路を変える

ビビは、国を脅かす秘密犯罪会社バロックワークスに潜入していました。正体を知られて追われる身となり、麦わらの一味は彼女をアラバスタへ送り届けることになります。その途中で、ナミが高熱を出して倒れる。

一刻も早く帰国したいビビにとって、医者を探す寄り道は軽い選択ではありません。それでもナミの治療を優先する。自分の国を救ってほしいという頼みが、目の前の仲間を置き去りにしていい理由にはならない。その判断が先に描かれることで、ビビが後に国民の命を守ろうとする姿も、王女としての言葉だけではなくなります。

ドラム島では、チョッパーがルフィたちと出会います。彼には、居場所を与えたヒルルクと、医術を教えたDr.くれはがいる。人間にもトナカイにも受け入れられなかった彼は、二人の医者との暮らしを通じて、人を治す医者になりたいと願うようになりました。ルフィの誘いは、その夢を持って島の外へ出るきっかけになります。

チョッパーはワポルとの戦いを経て船医となり、雪の国を旅立ちます。ヒルルクの願いを受け継ぐ桜色の雪に送られた後、物語は雨の降らない国へ移る。この景色の変化も、長い旅の記憶に残ります。

クロコダイルは、人々が互いを信じられなくなるように仕向ける

クロコダイルは、単に王宮を襲って玉座を奪おうとしているわけではありません。表では国を守る英雄として振る舞い、裏ではバロックワークスを動かして、国王が国民を苦しめていると思わせます。

干ばつで生活が壊れれば、人々は理由を求めます。そこで人工的に雨を降らせるダンスパウダーの疑惑や、国王を陥れる工作が効いてくる。国王を信じる側と、裏切られたと考える側が争うほど、仕掛けた本人は安全な場所から国を奪いやすくなります。

ユバで井戸を掘り続けるトトは、この状況を小さな場所から見せる人物です。ビビが頼りにしていた反乱軍はすでに拠点を移していて、説得に来たはずの旅は空振りになる。残った老人が国王を信じ続けていることも、町の渇きをすぐに解決はしません。

ビビは反乱軍の指導者コーザを知っています。それでも、彼一人に会って説明すればすべてが元へ戻る段階を過ぎつつある。クロコダイルの怖さは戦闘力に加えて、真相が伝わる前に次の怒りを生み出してしまうところにあります。

ルフィとビビが衝突して、引き受ける責任が変わる

ユバを出た後、ルフィはビビの方針に異を唱え、クロコダイルを倒すことを優先しようとします。死者を出したくないビビに対して、その願いを口にするだけでは戦争は止まらないと突きつける。助けるためについてきたはずのルフィが厳しいことを言うので、ここは読む側にも居心地の悪さがあります。

けれど、ルフィが求めているのは、国民を諦めることではありません。ビビだけが命をかけて、他の人間を危険から遠ざけようとするやり方を変えることです。一緒に来た自分たちにも、危険を引き受けさせてほしい。ビビが抱え込んでいた責任を、ようやく仲間が分け持てるようになります。

その後の一味は、同じ場所で一緒に戦い続けません。ビビを先へ行かせるために幹部を引き受け、ルフィは黒幕と戦い、ほかの仲間は広場への砲撃を止めようと動く。砂漠での衝突は、この分担ができるようになるための痛いやり取りだったのだと思います。

砂の体に、血で濡れた拳を届かせる

クロコダイルとの戦いは、負けるたびに障害の正体が少しずつ変わります。

最初の砂漠での対決では、砂になる体を殴れず、ルフィは鉤爪で腹を貫かれて敗北します。二度目は水を使って触れられるようになりますが、水分を吸い取られて再び倒される。弱点を見つけても、それだけでは勝ち切れません。

三度目の地下での戦いでは、血で濡れた拳や足で、クロコダイルの実体を捉えます。傷を負った体そのものが、相手に打撃を届かせる条件になるのです。毒の鉤爪でさらに追い詰められながら、最後はゴムゴムの暴風雨でクロコダイルを地上へ吹き飛ばします。

ここでは勝ち方と絵の動きが噛み合っています。国を操ってきた男が、地下から人々のいる地上へ叩き出される。長く姿の見えなかった黒幕との決着が、ようやく戦場の人々にも見える場所へ出てくるのです。

仲間たちも、同じ方法では勝たない

ゾロはMr.1との戦いで鋼鉄を斬るところまで踏み込みます。一方、ナミはウソップ製の天候棒を、気象の知識を使って戦闘に生かす。二人とも強くなりますが、その中身はまるで違います。

ウソップとチョッパーは、Mr.4とミス・メリークリスマスの組を二人の連携で倒します。サンジがMr.2・ボン・クレーと戦う間にも、別の場所で必要な仕事が進んでいます。

それぞれの勝利で道が開けても、砲弾の危機は残る。時計塔での阻止からペルが砲弾を上空へ運ぶまで、個人戦の決着を重ねるだけでは国を守り切れない忙しさが続きます。

戦いが止まっても、ビビは海へ戻らない

クロコダイルが倒れ、雨が降り始めた広場で、ようやくビビの訴えが人々に届きます。大声を出せるようになったからではありません。雨と黒幕の敗北が、怒りに呑まれていた人々が立ち止まるきっかけを作る。ビビの言葉は最初から同じでも、聞く側の状況が変わったのです。

この終わり方は、ルフィの勝利だけで国の問題が片づいたとは感じさせません。人々は互いに武器を向けてしまったし、傷ついた暮らしも残っています。ビビが冒険を続けず国に残るのは、救われた後のアラバスタにも、自分の仕事があるとわかっているからでしょう。

出航する船に向かってビビが仲間でいられるかを問いかけても、一味は声で返事をしません。海軍の前で海賊との関係を明かせば、彼女の立場を危うくする。代わりに左腕の×印を掲げます。(公式あらすじ)

×印は、変身で姿をまねるMr.2への対策としてつけた印でした。見た目に惑わされず仲間を確かめるためのものが、今度は一緒の船にいなくても仲間だと伝えるために使われる。別れの寂しさをなくさずに、関係が続くことを示しているのが、この場面のいいところです。

その後、船にはニコ・ロビンが姿を現します。古代兵器プルトンのありかを求めていたクロコダイルにとって、古代文字を読める彼女は欠かせない協力者でした。その彼女を最後には切り捨てたクロコダイルと、命を救ったルフィ。ロビンは、救われた後の行き先としてルフィの船を選びます。

ビビは残り、敵だったロビンが乗る。この入れ替わりをすんなり受け入れられない気持ちも残したまま、船は次の島へ進みます。誰を信じるかという問いは、国での戦いが終わっても、一味のすぐそばにあるのです。

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