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音の忍を倒し、追跡路を開き、仲間を先へ送り出す。サスケ奪還編では、いくつもの戦いが目的に向かってつながっています。それでも最後に、サスケは帰ってきません。積み上げた勝利が任務の成功にならないため、追跡を終えた者たちは、自分が何を守れたのかを問い直すことになります。
対象は通常のジャンプ・コミックス20〜27巻。20巻の病院での衝突から、27巻の任務後と旅立ちまでを扱います。27巻にはカカシ外伝も収録されていますが、本稿の中心は第一部の奪還任務です。結末までネタバレがあります。
水のタンクが見せた、サスケの焦り
病院の屋上でナルトとサスケがぶつかり、カカシに止められた後、二人の術の跡がタンクに残ります。サスケは自分の千鳥とナルトの螺旋丸の威力を見比べ、ナルトが以前と同じ落ちこぼれではないことを突きつけられる。
ナルトの成長を喜べる余裕があれば、競争は修業への刺激になったはずです。しかしサスケは、再会したイタチに圧倒された直後にいる。仲間が強くなったという出来事が、自分だけ復讐から遠ざかっている証拠のように見えてしまいます。目の前の友人を見ながら、評価の基準はそこにいない兄へ向いているのです。
大蛇丸の部下たちは、その焦りにつけ込みます。里にいても欲しい力は得られないと示し、別の場所へ進むよう促す。サスケは単に連れ去られた被害者ではなく、危険を知りながら里を出る側に回ります。
出発を止めようとするサクラとの別れにも、その意思が表れます。サクラの存在を完全に無価値だと言い切ることはできない。だから別れの言葉を残す。それでも振り返らない。大切だった事実と、これから離れていく決断が両立しているところに、この離反の痛さがあります。
一人ずつ残る隊列に、全員の得意なことがある
シカマルが率いるのは、ナルト、チョウジ、キバ、ネジの小隊です。追跡、索敵、近接戦闘など、能力を踏まえて動くため、同行者を集めただけの集団には見えません。ところが音の四人衆に進路を阻まれるたび、隊員を一人ずつその場へ残す必要が生じます。
次郎坊に挑むチョウジには、シカマルに自分の価値を認めてもらった記憶があります。自分を侮辱されたことより、友人を貶されたことが許せない。秘薬の力で勝つ場面では、いつも穏やかな人物の怒りと、体を壊しかねない代償が同時に見えます。
続くネジと鬼童丸の戦いは、敵の分析が具体的です。遠距離からの攻撃と白眼の死角によって、ネジの得意な間合いが奪われていく。ネジは攻撃を完全に避け続けるのを諦め、傷を負うことを織り込んで反撃へつなぐ。中忍試験では運命に縛られていた少年が、仲間を進ませるために、自分から不利な条件を引き受けます。
二人はそれぞれ敵を倒しますが、その場で先の様子を確かめられません。自分の勝利を仲間が目的へつないでくれると信じるしかない。個別の一騎打ちなのに、孤立した武勇伝にならないのは、そのためです。
砂の援軍が変える、助ける側と助けられる側
追跡が進むと、残った人数だけでは戦線を支えられなくなります。キバと赤丸は左近・右近に、シカマルは多由也に追い詰められる。ナルトの先へ立ちはだかる君麻呂は、病に侵された体でなお大蛇丸のために働こうとします。
ここにリーが駆けつけ、さらに砂の我愛羅、テマリ、カンクロウが加勢する。テマリはシカマルを、カンクロウはキバたちを救い、我愛羅はリーと共に君麻呂を相手にします。かつて木ノ葉を襲った側の忍に助けられるから、この援軍には戦力の補充以上の意味があります。
とりわけ、リーと我愛羅の組み合わせは忘れにくい。中忍試験でリーの体を壊した相手が、今度はその命を守るために戦う。過去の敵対をなかったことにせず、現在の行動で関係を変えていく姿が、サスケを失いかけている本筋の横に置かれます。
君麻呂は最後まで脅威であり、決定打を放つ寸前に病によって力尽きます。我愛羅が余裕をもって倒した勝負ではありません。援軍が来れば安全という単純な区切りもなく、辛うじて生き残った感覚が続きます。
ナルトを友人だと認めているからこそ、サスケは切ろうとする
終末の谷へたどり着いたナルトは、サスケを連れ帰ろうとします。サクラとの約束はありますが、それだけが動機なら、この衝突の激しさは説明できません。孤独だったナルトにとってサスケは、競い合いながら自分を見てくれる存在になっていました。
サスケも二人の関係を軽く見てはいません。最も親しい友を殺すというイタチの言葉が問題になるのは、ナルトがすでにその位置にいるからです。友情を感じていない相手なら、断つべき絆そのものが成立しない。
九尾の力と呪印が衝突し、最後に立っているのはサスケです。ただし、倒れたナルトを殺して去ることはしません。イタチに示された方法へそのまま従うことを拒み、自分の道で力を得ようとする。ナルトは説得にも戦闘にも勝てないまま、生きて残されます。
この決着を友情が消えた瞬間と読むと、サスケのためらいがこぼれます。つながりは残っている。それでも、相手が望む場所へ一緒に戻るとは限らない。二人が互いを特別な存在と認めていることが、ここでは和解を保証してくれません。
シカマルの涙の後に、病室がある
任務は失敗し、シカマルには部下を危険へ連れていった責任が残ります。個々の戦闘で頭が回ることと、全員を帰す指揮を執れることの距離が、帰還後になって重くのしかかる。彼の涙は、現場で指示を出していた姿を弱めません。結果を引き受ける人間だったからこそ、そこで張り詰めたものが切れます。
チョウジとネジは治療を受けて生き残ります。誰も死ななかったから軽い任務だったとは言えないし、サスケが戻らなかったから全て無意味だったとも言えない。病室で回復を待つ時間が、その両方を残します。
サクラは綱手のもとで学ぶ道を選び、ナルトは自来也と修業へ出る。第一部を閉じるのは、できなかったことを消す祝勝会ではなく、次に手を伸ばすための準備です。再会にはまだ時間がかかる。その時間を別々の場所で生きるところまで描くから、終末の谷の敗北は長く続く物語の傷になります。
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