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原作の対象巻を読む
DEATH NOTE 7巻
月は自分一人で名前を書き続けるのをやめ、誰かに役割を渡していきます。捜査本部では二代目Lを演じ、外では魅上照が裁きを代行し、高田清美が連絡をつなぐ。キラの力が社会へ広がるほど、計画に関わる人も増えます。
第二部で崩れるのは、その連携です。誰かが無能だったからというより、全員が同じ情報を持てないまま、最善だと思う行動を取ってしまう。月のつもりを察して動く協力者がいることは、便利さであると同時に危うさでした。
対象はジャンプ・コミックス7巻後半〜12巻、page.60から始まる第二部です。Lの死から続けて読む場合は7巻も必要です。以下、原作漫画の結末まで触れます。
ニアとメロは、最初から息の合う二人ではない
Lの後継者候補だったニアとメロは、ワイミーズハウスで彼の死を知らされます。しかし二人で同じ席を継ぐ道は選ばず、それぞれの方法でキラへ近づきます。
ニアはアメリカでキラ対策機関SPKを率い、情報を集めます。メロはマフィアと組み、月の妹・粧裕をさらって、捜査本部が持つノートとの交換を要求する。後者の行動は、キラを倒す目的だからといって正当化できるものではありません。無関係な家族が取引の材料にされます。
二人の距離があるため、月も片方の手順を読めば安心とはいきません。ニアの推理に対応している間に、メロが状況そのものを変える。Lとの駆け引きで得た勝ち方を、そのまま使い続けられない構造です。
総一郎に月の寿命が見えた理由
ノート奪還作戦に臨む総一郎は、リュークと死神の目の取引をします。メロの本名を知りますが、ノートへ書いて殺すことをためらい、マフィアの銃撃で致命傷を負います。
病床で月の寿命を見た総一郎は、息子はノートの所有者ではないと考え、キラではなかったと安心します。ここは運命が無実を認めた場面ではありません。当時の月が所有権を放棄していたため、寿命が見えたのです。
月は以前に所有していたノートへ身体を触れさせ、記憶を保っていました。所有していること、触れていること、キラとして行動していることは、それぞれ別です。総一郎が見た情報は本物でも、そこから導いた結論は違っていました。
このずれがつらい。父は自分の目で息子を確かめられたと思い、読者はその安心がルールの使い方で作られたものだと知っている。月の技巧が冴えるほど、身近な人へ戻れなくなっていく場面です。
魅上と高田には、計画の全体が見えない
魅上はキラを信奉する検事で、月から裁きを任されます。指示のない場面でも意図を察し、自分で判断する。月はその働きを評価しますが、相手が何を知っているかを揃え続けるのは難しくなります。
魅上がキラの代弁者に選んだ高田は、月の大学時代の知人です。月は彼女との関係を使って魅上と連絡し、殺人の実行にも関わらせます。高田にはノートの切れ端が渡され、魅上は偽のノートに書く姿を監視側へ見せる。実際の死と、目の前で名前を書く行為を切り離す仕掛けです。
ニア側が偽物へ細工すれば、それで裁きを止めたと思い込む。月はその誤認を利用して、対面の場へ本物を持ち込ませるつもりでした。自分で殺さない体制を作りながら、最後の一手だけは他人の手で確実に実行させたい。そのためには、予定外の出来事が起きても、全員が同じ対応を選ばなければなりません。
高田の誘拐で、本物のノートが動く
最終対面の直前、メロが高田を誘拐します。高田は隠していたノートの切れ端にメロの名を書き、殺害します。
月は証拠を消すため、高田自身の名前と死の状況も書きます。一方、月が自由に動けないと思っている魅上も、高田を始末しなければと判断し、銀行の貸金庫から本物のノートを取り出します。
魅上が動いた目的は、高田を救出することではありません。口封じをする必要があると考えたからです。月には切れ端で処理する手段があると知らず、同じ目的のために別々に動いたことが失敗につながります。
尾行していたジェバンニがこの動きから本物の存在をつかみ、ニア側はそちらもすり替えます。メロの誘拐がなければ、ニアは偽物を押さえたまま対面へ進んでいた。メロがどこまで見通していたかを断定する必要はありませんが、彼の行動が勝敗を変えたことははっきりしています。
倉庫では、書かれなかった名前が証拠になる
イエロー・ボックス倉庫で、魅上は死神の目を使い、集まった人々の名前を書きます。ただし、神だと信じる月の名前だけは書かない。
月は自分以外の捜査側全員が死ぬつもりで、勝利を口にします。ところが時間が来ても死者は出ません。ニア側が本物も把握していたと分かり、月の計画は崩れます。
決め手として見せられるのは、ノートに月の指紋や筆跡が残っていたという話ではなく、月だけが殺害対象から外されていることです。魅上にとって当然の忠誠が、ここでは関係を示す穴になります。
この場面では、名前を書かれることを恐れてきた物語が、一人だけ書かれていないことを問題にする。仕掛けが複雑になっても、最後の見せ方は最初のルールへ戻っているので、読んでいて腑に落ちます。
松田が止め、リュークが月の名を書く
追い詰められた月は、腕時計に隠した切れ端でニアを殺そうとします。それを見た松田が発砲し、阻止します。
松田はキラによる犯罪抑止に心が揺れたこともある人物です。同時に総一郎を慕い、月を信じていた。最後の銃撃には、目の前の犯罪を止める行為と、その信頼を利用された怒りが重なっています。
原作漫画の月は、倉庫から逃げて階段で静かに死ぬのではありません。倉庫内でリュークに助けを求めますが、リュークが書くのは月自身の名前です。月は死を恐れ、抵抗しながら命を落とします。逃走して階段で最期を迎えるのはアニメ版の演出です。
人の死を計画の一部として扱ってきた人物が、自分の死には納得できない。惨めさを隠さず描く原作の終わり方は、神としての敗北より、一人の人間が死にたくないと願う姿を強く残します。
キラを倒しても、信仰は残る
事件後、ニアはLを継ぎます。ただ、最終話にはキラを信じて祈る人々も描かれます。月が死んだことと、社会が彼を求めなくなることは同時ではありませんでした。
また、松田はニアが魅上をノートで操ったのではないかと疑いますが、それは作中で確定した真相ではありません。勝った側の行動にも、読者が考える余地が残されています。
第二部の決着は、きれいに協力した正義の二人が悪を倒す話には収まりません。メロの犯罪も、月の協力者への扱いも、残された人の疑念もある。その中でニアが一人では届かなかったことを認める姿が、すべてを自分の力で支配できると思った月との、最後の距離になっています。
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