本ページはプロモーションを含みます。
原作の対象巻を読む
のだめカンタービレ 1巻
千秋真一は、のだめの部屋を片づけ、食事をつくり、演奏の間違いまで指摘します。隣人の面倒を見てばかりのように見えますが、音楽では千秋自身が何度も助けられます。思いどおりに弾かない野田恵と合わせるうちに、自分の正しさを伝えることと、人と音楽をつくることの違いを知っていくからです。
桃ヶ丘音大編を読むなら、千秋がのだめの才能を発見する場面と同じくらい、千秋の指揮で人が動かなくなる場面が気になります。楽譜が読めて、頭の中に完成形があっても、そのまま全員へ渡せるわけではありません。
ここではKC KISS通常版1〜6巻の出会い、Sオーケストラ、学園祭から次の楽団へ向かう時期をネタバレありで扱います。全13巻の新装版とは収録範囲が異なります。(講談社・通常版1巻、通常版6巻)
二台のピアノでは、片方だけ正しくても合わない
千秋はピアノ科に在籍しながら指揮者を目指しています。ところが、幼い頃の恐怖体験から飛行機にも船にも乗れず、望む海外での勉強へ進めません。国内で周囲を見下すような態度には、この行き詰まりも混ざっています。
そんな千秋が隣の部屋で耳にするのが、のだめの弾くベートーヴェンの「悲愴」です。演奏には間違いも勝手な変化もあるのに、無視して立ち去れない。理屈では認めがたいものに、自分の耳が反応してしまいます。
二人が取り組むモーツァルトの二台のピアノのためのソナタでは、その違いが直接ぶつかります。千秋はのだめを正そうとし、のだめは耳でつかんだ自分の流れで弾こうとする。どちらも一人で弾いているままなら、二台ある意味がありません。
千秋が相手の音へ耳を向けたとき、合わせることは、相手の間違いをすべて許すこととは違うと見えてきます。何を感じてそう弾くのかがわかれば、入り方も応じ方も変えられる。のだめの自由さを称賛するだけの場面ではなく、千秋が人の音から自分の弾き方を変えた場面です。
シュトレーゼマンが集めたSオケは、千秋の楽器ではない
Sオケは、世界的指揮者シュトレーゼマンが学内で選んだ学生たちによる特別編成のオーケストラです。千秋はその指導を任されますが、思い描いた音と実際に返ってくる音の差に苛立ちます。
初めの練習ではベートーヴェンの交響曲第7番に取り組み、デビューの演奏会へ向けては第3番「英雄」を練習します。ドラマの印象から、原作のSオケの舞台もすべて第7番だと思って読むと混同しやすいところです。(原作の曲目と使用場面)
千秋は間違いを細かく指摘できます。しかし、指摘が重なるほど学生たちの気持ちは離れていきます。指揮棒は奏者の手を直接動かす道具ではありません。自分が一人で弾くときの判断を、そのまま大勢へ命令しても音にはならないのです。
のだめの助言も受けながら、千秋はSオケが出せる音に向き合います。奏者の癖を消し去って頭の中の楽団に入れ替えるのではなく、ここにいる人と曲を仕上げる。「英雄」の演奏が好評を得るところには、完成度に加えて、奏者が自分の音として引き受けた手応えがあります。
峰の実家にご飯を食べに行く時間も、楽団をつくる
ヴァイオリンの峰龍太郎は、千秋の正確さとは違う勢いで音楽へ向かいます。実家は大学近くの中華料理店「裏軒」です。音楽の話と日々の食事がつながる場所であり、峰自身も仲間を巻き込んでいきます。
ティンパニ奏者の奥山真澄を含め、千秋の周囲には音楽以外でも騒がしい人が増えます。本人は迷惑そうにしていても、一緒に食べ、練習し、相手の事情を知る。その積み重ねで、楽団員が楽譜上の各パートではなく、顔のある人になります。
Sオケの学生は、同じ理由でうまく弾けないのではありません。練習や生活の問題、得意不得意、自信のなさが、それぞれの音に出ています。千秋が関わるべきなのは、抽象的な「落ちこぼれ集団」ではなく、一人ずつ違う相手です。
この日常の賑やかさがあるから、演奏会でまとまった音が出たとき、人数の多さにも意味が出ます。日頃はかみ合わない会話をしている人たちが、この曲の間だけ同じ方向を向く。整然とした優等生の集団とは違う過程で、千秋は人と演奏する喜びをつかみます。
学園祭で、のだめは客席から千秋を見上げる
学園祭では、のだめがマングースの着ぐるみで鍵盤ハーモニカを吹く「ラプソディ・イン・ブルー」と、千秋がピアノを弾くラフマニノフのピアノ協奏曲第2番が描かれます。千秋は後者で、シュトレーゼマンの指揮するAオケと共演します。
のだめにとって、千秋はいつも隣にいて料理をしてくれる人でもあります。しかし舞台の上では、自分がまだ立てていないところにいる。客席から演奏を聴くことで、身近な先輩への恋と、音楽家への憧れが一度に強くなります。
のだめはラフマニノフを弾きたいと願い、千秋と二台のピアノで向き合います。ここで弾く動機は、試験で評価されたいというものではありません。さっき聴いた音へ自分も参加したい。その欲求が、耳の良さだけに頼っていた彼女を、曲に向かう時間へ連れていきます。
一方で、好きな曲を一度強く願って弾くことと、音楽家として継続して学ぶことの間には距離があります。序盤は、この一度の演奏でのだめが進路を決めきったとは描きません。好きな人と一緒に弾きたいという願いが、どこまで本人の音楽への意志になるのかが、後へ残ります。
Sオケの成功のあとにも、千秋には選び直すことがある
Sオケで得た成功は、大学の時間が終われば同じ形では続けられません。千秋たちは、学校を越えた仲間とR☆Sオーケストラへ進んでいきます。成功した楽団にずっと留まるのではなく、そこで知り合った人と別の場をつくる選択です。
のだめにも、千秋のそばにいたい気持ちと、自分が何のためにピアノを弾くかという問題が残ります。面倒を見てもらう関係が心地よくても、代わりに練習してもらうことはできません。
桃ヶ丘音大編の千秋は、ようやく人の音を聴きながら進めるようになります。のだめは、その千秋が出した音を聴いて、自分も先へ行きたいと感じ始める。二人の生活のどたばたと、演奏する人間としての変化が、同じ部屋と舞台の間を行き来しているところが、この序盤を読む楽しさです。
本ページはプロモーションを含みます。
この編を読むなら
電子書籍ストアやAmazonで、巻別購入・まとめ買いをチェック
のだめカンタービレ 1巻
のだめカンタービレ 2巻
のだめカンタービレ 3巻
のだめカンタービレ 4巻
のだめカンタービレ 5巻
のだめカンタービレ 6巻
※ 上記リンクから購入すると、サイト運営の支援になります。価格は各ストアにてご確認ください。
