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葬送のフリーレン

葬送のフリーレン・一級魔法使い試験篇の感想|合格したフェルンが選んだ魔法

原作の対象巻を読む

葬送のフリーレン 4巻

対象: 4〜7巻

一級魔法使いになったフェルンが、特権として選ぶのは、服をきれいにする魔法です。危険な試験を通り抜け、どんな強力な術でも望めるところへ来て、旅の暮らしに役立つものを選ぶ。この締め方に、フェルンが誰と魔法を学んできたかがよく表れています。

試験篇には、人を殺すことをためらわない受験者も、地位を得た老練な魔法使いも登場します。強さの形が増える一方で、合格が魔法使いとしての人生の最終評価にはならない。フリーレンの不合格とフェルンの合格が並ぶのが、この章の面白いところです。

原作の少年サンデーコミックス版では、参加への導入は4巻末、試験の中心は5〜6巻、合否と旅立ちは7巻冒頭にかかります。以下はこの範囲のネタバレを含みます。6巻の紹介にもあるように、迷宮攻略は第二次試験です。

最初の課題は、強い敵を倒すことではない

第一次試験の担当はゲナウ。三人一組で隕鉄鳥(シュティレ)を捕まえ、期限まで保持し、組の全員が生きてそろっていることが合格条件です。フリーレンはカンネとラヴィーネ、フェルンはユーベルとラントと組みます。

シュティレは魔力に敏感で、素早く飛ぶため、派手な魔法を撃てば簡単に取れる獲物ではありません。フリーレンたちは水場や鳥の習性を調べ、捕獲できる状況を作ります。さらに、せっかく捕まえても他の組に奪われる。課題の短い説明から、観察と対人戦の両方が必要になる仕組みです。

カンネとラヴィーネは言い争っていても、水と氷を扱う力をつなげられます。フリーレンが二人の性格やできることを知る時間が、そのまま作戦の材料になる。普段の旅で人を知ろうとしている主人公に、試験の方法がよく合っています。

雨が降ると、カンネの立場が変わる

リヒターと対峙したカンネたちは、力量差に苦しみます。ところが、フリーレンが試験場の結界を破り、雨が入ると、水を操るカンネが大量の水を使えるようになる。先ほどまで不利だった相手が、その環境では手のつけられない脅威に変わります。

魔法の強さを人物ごとの順位表にできないのは、こうした条件の差があるからです。同じ受験者でも、場所、材料、組む相手でできる仕事が変わる。フリーレンの大きな力も、自分が直接勝つためだけでなく、仲間が力を出せる条件を作るために使われています。

一方、魔力が尽きても拳で鳥を奪いに行くデンケンには、実務的なしぶとさがあります。美しい魔法の勝負を終えれば終わり、ではなく、合格条件を満たすために残った手を使う。老練さが知識だけでなく行動へ出るので、堅い肩書きの人物が一気に近く見えます。

第二次試験は、さっきの敵と相談しなければ進めない

ゼンゼが課す第二次試験は、零落の王墓の最深部への到達です。迷宮には、侵入した者の能力を再現する複製体が現れます。強い人が参加しているほど、その人の複製体も厄介になるため、フリーレンの存在まで障害になります。

第一次試験では鳥を奪い合った相手とも、今度は能力の情報を交換する必要があります。誰が誰を相手にすればよいかを考え、相性のよい組み合わせを作る。互いの戦い方を見てきたことが、共同攻略へ役立ちます。

ユーベルがゼンゼの複製体を切れるのは、すべての防御魔法を無条件に破れるからではありません。髪の毛は切れるものだという、彼女の強いイメージがあるためです。技巧を理解した人ほど難しく考えてしまう相手に、別の感覚を持つ人が届く。実力と相性のずれを、魔法という題材で見せています。

師匠の隙を知っているのは、近くで学んだ弟子

フリーレンの複製体を突破するため、本物のフリーレンとフェルンが協力します。真正面から力で上回るという作戦ではありません。攻撃へ意識を向けた一瞬、フリーレンの魔力探知が途切れる。そのわずかな隙をフェルンが狙います。

長い年月を生きた師匠にも癖があり、弟子はそれを見ています。教える側が一方的にすべてを知っていて、教わる側には何もないわけではない。日々近くで魔法を使ってきたことが、大きな差を埋める情報になるのです。

それでも、計画があるから簡単に勝てる相手ではありません。複製体が見せる底知れなさもあり、フェルンが師匠を全面的に超えたという話にはならない。強さの差を知りながら、一緒なら手が届くところまで育った。その到達点が見える戦いです。

ゼーリエの面接で、二人の道が分かれる

第三次試験はゼーリエ自身の面接です。ゼーリエはフランメの師匠で、フリーレンから見ると師の師に当たります。直接フリーレンを育てた師匠はフランメであり、二人の魔法観にも、その間にいた人の記憶が関わっています。

ゼーリエはフリーレンを不合格にします。対してフェルンは、ゼーリエが抑えている魔力の揺らぎを見抜き、才能を認められる。フリーレンと同じ場に立っても、同じものが見えているわけではないと、弟子自身の力が示されます。

ゼーリエはフェルンを弟子に望みますが、フェルンはフリーレンのもとを選びます。より強い人につけば、よりよい人生になるという計算には従わない。魔法を学ぶ場所を、日々を共にしてきた関係から自分で選んでいます。

最終合格者はフェルン、デンケン、ヴィアベル、ユーベル、ラント、メトーデの六人です。落ちた者を含め、ここで人物の価値が確定するわけではありません。試験の厳しさを描いたうえで、その外にも暮らしと関係が続く余地が残されています。

洗濯の魔法を喜べる師弟であること

フェルンが受け取るのは、服の汚れを落とし、きれいにする魔法です。強さを認められた人が、毎日の負担を減らす力を選ぶ。その選択をフリーレンも喜びます。魔法を集める楽しさや生活の便利さを、師弟が同じように大事にしてきたことが分かります。

また、壊れたフェルンの杖を巡るやり取りでは、実用品である杖にハイターとの思い出があると、フリーレンが改めて気づきます。師匠として弟子を育てる一方で、相手が何を大切にしているかは、まだ学び続けているのです。

資格を得たことで北へ進めるようになり、一行はオイサーストを離れます。持ち帰るものは戦闘技術や肩書きだけでなく、知り合った魔法使いたちと、少し楽になる旅の暮らし。激しい試験を経ても、帰り着くのがこの作品らしい日常なのがうれしい終わり方です。

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