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ちはやふる

ちはやふる序盤のネタバレ考察|千早の夢が五人のかるた部になるまで

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ちはやふる 1巻

対象: 1〜5巻

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綾瀬千早がかるた部をつくろうとするとき、すでに本人の中では、かるたが面白いことも、続ける意味があることも決まっています。けれども、誘われる側まで同じ気持ちとは限りません。畳に座りたい理由が違う人たちを、どうやって一つの部にするのか。『ちはやふる』序盤では、千早の勢いが人を動かす一方、その勢いだけでは届かない場面も描かれます。

小学生時代の綿谷新、真島太一との出会いから、瑞沢高校での部の創設、初めての全国大会まで。ここではBE・LOVE KCの通常版1〜5巻を、敗退と若宮詩暢との対戦結果も含めて振り返ります。講談社の5巻紹介が扱うのは、団体戦で途中棄権した千早が翌日の個人戦に臨む場面です。

新の眼鏡を隠した太一も、かるたへ戻ってくる

小学6年生の千早は、姉がモデルとして成功することを自分の夢として話していました。福井から来た新は、自分で取り組む夢として、かるたの名人になることを語ります。千早が自分の耳の良さに気づき、一枚の札を取る喜びを知る出発点です。

新は学校では訛りをからかわれ、目立たない存在です。それがかるたの前では変わります。教室の人気や家庭の豊かさが、そのまま札を取る速さにはならない。太一が新の眼鏡を隠してしまう行動には、自分より強い相手を認められない焦りが表れています。

太一は眼鏡を返し、新に謝りますが、千早には知られたくないと頼みます。きれいに反省してすべてを解決する場面ではありません。新に負けたくない、千早に嫌われたくない、という気持ちは残っています。それでも、三人でかるたをする時間へ戻ってくる。

小学生の三人が組んだチームは、団体戦に優勝して別れるわけではありません。負けて、新の福井への転居と太一の中学進学を迎えます。勝てたから続けたいのではなく、一緒に取りたかった札がまだある。その未練が、高校生になった三人をつないでいきます。

千早が続けていても、新には続けられない時間がある

高校で再会した太一に、千早はかるた部をつくろうと持ちかけます。千早は中学時代もかるたを続けてきました。その本人にとって、新も当然続けているはずだという期待は自然ですが、福井を訪ねたときにそれが崩れます。

新は祖父を亡くし、かるたから離れていました。祖父は新にかるたを教えた人であり、目指す名人の姿でもあります。競技を続けることが、会えなくなった人のことを思い出す苦しさと結びついている。千早が知っている、かるたを楽しそうに取る新の姿だけでは、今の新を理解できません。

好きなら続けられる、という千早の見通しに、ここで他人の事情が入ってきます。すぐ同じ場所に連れ戻せなくても、東京でかるたを続けて待つことはできる。再会の約束は、同じ速度で成長する約束ではなかったのです。

この出来事を挟むと、高校の部員集めも違って見えます。誰もが千早ほど一直線ではない。太一が再び畳に座るまでのためらいや、新しい仲間が入部を決める理由を知ることが、部をつくる過程になっていきます。

奏が好きなのは、速さの向こうにある歌

大江奏は、和歌や和服を愛する人です。札を速く取る競技としてかるたに向き合う千早とは、同じ百人一首でも見ているものが違います。千早にとって得意な音で始まる札が、奏にとっては人が誰かを思った歌である。その違いが、部の中へ持ち込まれます。

奏は千早と同じ選手になってから入部するのではありません。袴を着ることや、歌を大切に扱うことを条件に、自分の好きなものを守りながら参加します。千早の熱意へ全面的に従う人を集めるのなら、このやり取りは要りません。違う関心のまま仲間になれるところに、瑞沢の広がりがあります。

西田優征には競技経験があり、駒野勉には勉強へ打ち込んできた時間があります。千早が「肉まんくん」「机くん」と呼ぶ二人も、欠員を埋めるためだけの人ではありません。過去に新と対戦した経験を持つ西田と、机に向かうことで自分を保っていた駒野では、畳に座る重さが違います。

五人揃って練習ができても、実力差は大きいままです。初心者がすぐ千早に追いつくような都合のよい成長はありません。試合でなかなか勝てない人が、そこに居続けられる部かどうかが、人数の次に問われます。

机くんが戻る場所を、太一が残す

東京都予選では、勝てない駒野が自分を戦力外のように感じ、試合から離れようとします。千早には、勝つために一緒に頑張りたい気持ちがある。ただ、その期待をまっすぐ渡すだけでは、駒野の苦しさは軽くなりません。

そこで太一は、駒野が戻れる余地を残します。強い人の励ましを聞いてすぐ強くなれるわけではないけれど、戻ってもよい席があるとわかれば、もう一度座れる。太一が担う部長の仕事は、千早と同じ勢いで人を引っ張ることとは違います。

瑞沢は予選を勝ち抜き、全国大会へ進みます。この勝利を千早の才能だけで説明すると、駒野を待った時間や、初心者が自分の試合を引き受けた過程が抜けてしまいます。五人を集めたこと以上に、五人で続ける理由を探したことが、この予選での収穫です。

全国で負けてから、夢に相手の顔がつく

近江神宮で迎えた全国大会では、千早が体調を崩し、団体戦の途中で棄権します。瑞沢も敗退し、東京でつかんだ勢いのまま勝ち進むことはできません。エースが頑張れば部員全員の願いをかなえられる、という形にはならないのです。

翌日の個人戦で出会う若宮詩暢は、千早が目指すクイーンです。千早は21枚差で敗れます。耳の良さを武器にしてきた千早が、聞こえた札を取ろうとする前に相手の手が来る。その差を体感することで、クイーンという言葉に具体的な手と姿勢が伴うようになります。

負けたあとにも、千早には帰れる部があります。奏の歌への愛着、西田の経験、駒野の考える力、太一の支え。詩暢に勝つための課題を見つけた千早が、それを持ち帰ってまた練習できる場所です。

1〜5巻の最後に残るのは、夢をかなえた満足よりも、ようやく夢の大きさを知った手応えでしょう。新にもらった夢は、そのまま借り続けるものではなく、異なる理由で集まった仲間と、千早自身が続けていくものへ変わっています。

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